元特別支援学校教員が語る!発達障害の子育てで大切な褒め方・叱り方

「うちの子、もしかして発達障害?」

初めての子育ては、嬉しいことや楽しいことだけでなく、戸惑いや不安もつきものですよね。

お子さんの成長や行動で「あれ?」と気になることがあると、心配でたまらない日もあるのではないでしょうか。

もしかしたら、「発達障害」という言葉が頭をよぎることもあるかもしれません。

でも、大丈夫です。

この記事では、元特別支援学校教員の私が、発達障害の子育てで本当に大切なこと、そして、褒め方・叱り方についてお伝えします。

少しでも、悩めるお母さん、お父さんの参考になれば幸いです。

目次

子どもを主役にする子育て

子育てに関する情報があふれる中で、親や教師の視点からのものが多くありませんか?

発達障害のあるお子さんを育てる上で大切なのは、「子どもを主役にする」ことです。

「親の都合」ではなく「子どもの都合」を優先する子育てができれば、お子さんはのびのびと成長し、親御さんの負担も軽くなります。

親の都合はイライラのもと

子育てにおいて、親の心に常に付きまとうのが「イライラ」や「ストレス」ではないでしょうか。
そして、その原因の一つが「親の都合」を優先してしまうことにあるかもしれません。

私たちは、子どもに対して、つい「こうあってほしい」「こうなってほしい」という期待を抱いてしまいます。
しかし、発達障害を持つ子どもは、その特性から、親の期待に応えられない場面も少なくありません。
そして、そのギャップが、親のイライラやストレスを増幅させてしまうのです。

例えば、朝の支度や外出の準備など、時間に追われる場面で、子どもが予想外の行動を取ったり、なかなか動いてくれなかったりすると、親はつい「早くしなさい!」「なんでできないの?」と声を荒げてしまいがちです。
しかし、それは「親の都合」を優先した結果であり、子どものペースや気持ちに寄り添えていないと言えるでしょう。

一方、「子どもの都合」を優先する子育てでは、親はまず子どもの特性や気持ちを受け止め、理解しようと努めます。
そして、子どものペースに合わせて、柔軟に対応していくことを大切にします。
そうすることで、親のイライラやストレスは軽減され、子どもも安心して過ごせるようになるのです。

親の期待を手放し、「子どもの都合」を優先する子育てを実践することで、親子の間に穏やかな時間が流れ始めます。
子どもは安心して自分らしく振る舞えるようになり、親も心に余裕を持って子どもと向き合えるようになるでしょう。

まずは子どものことを理解することから

発達障害の子育てにおいて、まず大切なのは、診断名や特性のラベルに囚われすぎず目の前の子ども自身を深く理解しようとする姿勢です。
「この子はどんな子だろう?」「何が得意で、何が苦手なんだろう?」「どんな時に喜び、どんな時に悲しむんだろう?」そうした問いかけを常に心の中に持ちながら、子どもの行動や言動を観察し、その内面に寄り添っていくことが重要です。

「診断の有無にとらわれすぎず」という言葉も、重要なポイントです。
確かに、専門家による診断は、子どもの特性を理解し、適切な支援を受ける上で役立つ情報となります。
しかし、診断名が全てではありません。診断がなくても、発達に凸凹がある子どもはたくさんいますし、診断があっても、その特性は一人ひとり異なります。

大切なのは、診断名ではなく、子ども自身をよく観察し、その子に合った接し方やサポートを見つけていくことです。

まずは、子どものことをもっと知りたい、理解したいという気持ちを持って、一歩踏み出してみましょう。

自分を理解してくれる大人が必要

発達障害のある子どもたちにとって、自分を理解してくれる大人の存在は、ありのままの自分を認めて受け入れてくれるかけがえのない支えとなるでしょう。

大人が子どもの特性を理解し、その子に合った接し方やサポートを提供することで、子どもは自己肯定感を育み、安心して自分らしく生きていくことができます。
逆に、理解のない環境に置かれた子どもは、自己肯定感が低下し、不登校や心身の不調といった二次的な問題を抱えてしまうリスクが高まります。

発達障害は複雑で多様な特性を持つため、すべてを完全に理解することは、親であっても難しいかもしれません。
しかし、大切なのは「理解しようとする姿勢」です。
子どもは、大人の言葉だけでなく、表情や態度からも多くの情報を受け取っています。
たとえ完璧に理解できなくても、子どもの気持ちに寄り添い、共感しようとする姿勢は、必ず子どもに伝わります。

そして、子どもが困っている時には、具体的な解決策を一緒に考えたり、必要なサポートを提供したりすることで、子どもが自信を持って困難を乗り越えられるように支えていきましょう。

子どもにとって、自分を理解してくれる大人は、親だけではありません。
学校の先生、友人、地域の人々など、様々な人が子どもに関わり、支えていくことができます。

発達障害のある子の褒め方

発達障害のあるお子さんを育てる上で、「平均」や「常識」にとらわれないことが大切です。

でも、個性的な行動が多いからこそ、褒めていいのか迷う場面も多いですよね。

ここでは、どんな時に褒めると良いのか、具体的なポイントをご紹介します。

子どもの「好き」に目を向ける

発達障害の子どもたちは、時に独特な興味や関心を示すことがあります。

例えば、ミニカーを走らせるのではなく、ひたすら並べることに夢中になったりすることがあります。
こうした行動は、一見すると「普通」とは違うように見えるかもしれませんが、それは子どもたちが持つ個性であり、大切な要素です。

そんなときは「たくさん並べられたね!」という声かけをしてあげましょう。
それは、まさに子どもの「好き」を尊重し、認める姿勢を表しています。
ミニカーを走らせることが「普通」の遊び方であっても、子どもが並べることに喜びを感じているのであれば、それを否定する必要はありません。
むしろ、「すごいね!」「よく頑張ったね!」といった一般的な褒め言葉よりも、「たくさん並べられたね!」という具体的な言葉の方が、子どもの達成感をより強く刺激し、自信へと繋がる可能性があります。

また、子どもの「好き」に目を向けることは、彼らの才能や可能性を発見するチャンスでもあります。
特定の分野への強い興味や集中力は、将来の夢や目標に繋がる可能性を秘めています。
親がそれを認め、応援することで、子どもたちは自分の得意分野をさらに伸ばし、自信を持って未来を切り拓いていくことができるでしょう。

子どもの「好き」に目を向けることは、親子の信頼関係を築き、子どもが自分らしく成長していくための第一歩です。

大人の基準で褒めない

大人はつい、自分が子どもにやってほしいことを頑張った時に褒めてしまいがちです。

でも、それは大人都合の褒め方

子どもも嬉しくはなりますが、プレッシャーに感じてしまうこともあります。

子どもが本当に喜ぶのは、好きなこと、興味のあること、得意なことで褒められた時です。

無理におだてる必要はない

子どもの気持ちに寄り添い、共感することが、褒め方のコツです。

常に褒める必要はありません。

目標に向かって頑張っている時や、達成できた時に、さりげなく声をかけるだけでも十分です。

子どもの様子をよく観察し、共感できるタイミングで褒めることを心がけましょう。

ASDとADHD、特性に合わせた褒め方

自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)のお子さんでは、褒め方のポイントが少し違います。

子どもの気持ちに共感するというのは同じですが、褒めるタイミングなどが若干違うので参考にしていただければと思います。

自閉スペクトラム症(ASD)の褒め方

自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんは、物事を計画的に進めたい気持ちが強い傾向があります。

そのため、何かをやり遂げた後、達成感を味わっているタイミングで褒めてあげると、喜びを共有しやすいかもしれません。

また、褒め言葉を選ぶ際にも注意が必要です。

ASDのお子さんは、皮肉や比喩といった遠回しな言い回しを理解するのが難しい場合があります。

「よく頑張ったね!」「〇〇ができたね!すごい!」など、わかりやすく具体的な言葉で褒めるようにしましょう。

注意欠如・多動症(ADHD)の褒め方

注意欠如・多動症(ADHD)のお子さんは、集中力が途切れやすく、気が散りやすい傾向があります。

そのため、何かをしている途中で「〇〇できてるね!」と声をかけて褒めてあげると、やる気を維持するのに効果的です。

集中力が途切れそうになっている時に、すかさず励ますのも良いでしょう。

また、ADHDのお子さんは、忘れ物やケアレスミスが多いので、計画通りに進まないことも珍しくありません。

そんな時は、「結果オーライ」の気持ちで、たとえ完璧でなくてもできたことを褒めてあげましょう

大切なのは「下心」のない褒め言葉

子どもを褒めるときに大切なのは、「下心」がないことです。

子どもの「好き」や「興味」を、素直に認める言葉をかけてあげましょう。

例えば、虫が好きなお子さんが珍しい虫について説明してくれた時。

「すごいね!」ととりあえず褒めるのではなく、「よく知ってるね!」と、子どもの知識を認める言葉をかける方が、お子さんの心に響きます。

親は「こうなってほしい」という気持ちを持つのは自然なことですが、その気持ちだけで子育てをすると、子どもは自信を失ってしまうかもしれません。

親の下心を手放し子どもの「好き」を尊重することが大切です。

発達障害のある子の叱り方

発達障害のあるお子さんを叱ることは、もちろん大切です。

しかし、褒め方と同じように、叱り方にもいくつかのポイントがあります。

ここでは、叱る時に意識したい3つのポイントをご紹介します。

教えるために叱る

お子さんに「こうしてほしい」と願って叱る時、効果的なのは「教えるための叱り方」です。

注意し、適切な行動を具体的に教えれば、お子さんも行動を改めることがあります。

大切なのは、お子さんに伝わっているかを確認すること。

教えようとしていることが、お子さんの発達段階に合っていれば、何度か繰り返すうちに理解できるでしょう。

もし伝わらない、または理解できても行動が変わらない場合は、その課題はまだ難しいのかもしれません。

その時は、叱るのをやめて、親御さんがサポートしてあげましょう。

憂さ晴らしのために叱る

親だって人間ですから、ついカッとなって感情的に叱ってしまうこともありますよね。

そんな時は、「さっきは感情的に叱ってしまった」と認めることが大切です。

そして、それ以上叱るのをやめ、同じような叱り方を繰り返さないようにしましょう。

感情的に叱ってしまった時は、お子さんに早めに謝ることも忘れずに。

叱る時は、お子さんのことを第一に考えることが重要です。

感情的に叱ると、次に真剣に叱った時に、お子さんが耳を貸してくれなくなる可能性があります。

その場をおさめるために叱る

時には、誰かに迷惑をかけてしまった時など、その場を収めるために叱る必要がある場面もあります。

感情的にならず、冷静に叱るようにしましょう。

この場合は、「形だけの叱り方」になりがちですが、それで良いのです。

効果は期待せず、何かを教えたい時は別の機会にしましょう。

特に自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんは、相手の気持ちを考えずに失礼なことを言ってしまう場合があります。

そんな時は、その場では叱ってトラブルを解決し、後から落ち着いて理由を説明してあげましょう。

大切なのは「本気」で向き合うこと

叱る時に大切なのは、「本気」で向き合うことです。

お子さんに変わってほしいと願うなら、そのための方法を真剣に考える必要があります。

叱るのが上手な人は、よく考えた上で叱るので、叱る回数は多くありません。

お子さんのために、親としてどこまで本気で向き合えるかが重要です。

褒め方・叱り方の方法は重要ではない

ここまで、色々な褒め方や叱り方のテクニックをご紹介してきましたが、実は「方法」そのものは、それほど重要ではありません。

一番大切なのは、お子さんを理解し、「親の都合」ではなく「子どもの都合」を優先する子育ての考え方です。

最初は難しいかもしれませんが、できることから少しずつ始めてみましょう。

お子さんは、大人の本心を見抜く力を持っています。

どうか「子どもが主役」になれるよう、日々心がけてみてください。

もし、つらいと感じたり、一人で抱えきれない時は、専門家に相談するのも一つの方法です。

この記事が、子育てのヒントとして少しでもお役に立てれば幸いです。

今回のブログ記事が、少しでも皆様の参考になれば幸いです。

気になることや質問があれば、X(旧Twitter)のDMや公式LINE、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください

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