不登校、大丈夫。まずできること、落ち着いて考えよう!初期対応と予防方法
「学校に行きたくない…。」朝、子どもの口からそんな言葉が出た時、あなたはどうしますか?
突然のことに、頭が真っ白になり、どうすればいいのかわからなくなるかもしれません。
もしかしたら、「なんで?」「どうして?」と問い詰めてしまうかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
大切なのは、まずは落ち着いて、子どもの声に耳を傾けること。
そして、焦らず、ゆっくりと、解決策を探っていくことです。
今回は、不登校の現状や原因、対応策や予防策などの役立つ情報をわかりやすく解説していきます。
増加傾向にある不登校の現状
ここでは、文部科学省のデータを基に、不登校の現状についてお伝えします。
その前に、文部科学省が定義している「不登校」について、簡単にご紹介します。
不登校の定義
文部科学省は、不登校について調査を行うために、以下のように定義しています。
不登校とは
文部科学省の調査では、「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
文部科学省 不登校の現状に関する認識
簡単に言うと、年間30日以上学校を休んでいる子どもが「不登校」とされています。
これは、不登校の状況を把握するための目安として、文部科学省が定めた基準です。
ただ、最近は、別室登校や出席扱いになるフリースクール、オンラインスクールなど、学びの形も多様化しています。
そのため、この定義に当てはまらないケースも増えているかもしれません。
私自身も、別室登校で毎日学校に通っている子どもたちを何人も見てきました。
令和4年度の不登校割合
こども家庭庁のデータでは、令和4年度小学生が1.7%、中学生が6.0%となっています。
割合で表すと小学生は2クラス(1クラス35人)に1人、中学生は1クラス(1クラス35人)に2人いる計算になる。
過去5年間の傾向として、小学校・中学校ともに不登校児童生徒数及びその割合は増加している
こども家庭庁 令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(いじめ関連部分抜粋版)
(小学校H30:0.7%→ R04:1.7% 、中学校 H30:3.7%→ R04:6.0%)。
最近は、フリースクールやオンライン授業などが増え、学校以外の選択肢を選ぶご家庭も増えました。
これも、不登校が増えている理由のひとつかもしれません。
小学校・中学校別の不登校の要因
ここでは、小学校・中学校別の不登校の要因を上位5つまで紹介します。
小学校の不登校の要因
- 無気力、不安 50.9%
- 生活リズムの乱れ、あそび、非行 12.6%
- 親子の関わり方 12.1%
- いじめを除く友人関係をめぐる問題 6.6%
- 該当なし 4.9%
「長期欠席者の状況」で「不登校」と回答した児童生徒全員につき、主たる要因一つを選択。
令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
このデータから、ほとんどの要因が無気力、不安であることがわかります。
意外に思われるかもしれませんが、いじめが要因と回答したのは0.3%しかありません。
中学校の不登校の要因
- 無気力、不安 52.2%
- 生活リズムの乱れ、あそび、非行 10.7%
- いじめを除く友人関係をめぐる問題 10.6%
- 学業の不振 5.8%
- 該当なし 5.0%
小学校に比べると、中学校では親子関係よりも、友人関係や学業の悩みが不登校の要因になる傾向があります。
いじめが原因の不登校は、小学校でも中学校でも0.2%と、割合としては少ないようです。
小・中学校における不登校の状況について
ここでは文部科学省の調査から小中学校における不登校の状況について解説していきます。
令和4年度 学年別の不登校数
- 小1 6,668人
- 小2 10,047人
- 小3 13,823人
- 小4 18,373人
- 小5 25,430人
- 小6 30,771人
- 中1 53,770人
- 中2 70,622人
- 中3 69,544人
中学3年生では少し減りますが、基本的には小学1年生から学年が上がるにつれて、不登校の数は増える傾向にあります。
不登校の長期化
文部科学省の調査では、不登校を経験した子どものうち、90日以上学校を休んだ子は全体の55.4%にのぼります。
このことから、不登校は長期化しやすい傾向があると言えそうです。
不登校児童生徒が学校内外で相談・指導等を受けた状況
- 学校内外で相談・指導を受けた児童生徒 184,831人 61.8%
- 学校内外で相談・指導を受けていない児童生徒 114,217人 38.2%
(※) 学校内外の機関等は、教育支援センター、児童相談所、病院、養護教諭、スクールカウンセラー等の相談員等を指し、上記の学校内外の機関等で相談・指導等を受けていない不登校児童生徒には、担任等の教職員が相談・指導をしている児童生徒を含む。
この結果から、不登校を経験した子どもの約4割は、相談や指導を受けていない可能性があることがわかります。
不登校対応マニュアル
学校には、不登校に対応するためのマニュアルがあることをご存じですか?
これを知っておくだけでも、学校がどんな対応をしてくれるのか、見通しが立てられます。
ぜひ一度、目を通してみてくださいね。
不登校のマニュアル例
ここでは、不登校になる欠席30日までをマニュアルとして考えています。
欠席1日目:家庭に電話連絡
ご家庭に電話連絡が入ります。
お子さんの安否確認も兼ねていますので、気になることや相談したいことがあれば、この時に伝えておきましょう。
欠席3日:家庭訪問の実施
家庭訪問が行われることがあります。
お忙しい時間帯かもしれませんが、初期対応としてとても大切なので、できるだけ対応しましょう。
欠席5日:対策会議の実施
学校内で対策会議が開かれます。
欠席が続いているお子さんについて話し合い、不登校対策チームが動き始めます。
欠席7日:教育委員会に報告
教育委員会に報告がされます。
このタイミングで、2回目の家庭訪問があるかもしれません。
欠席10日:専門家チームの要請
専門家チームによる会議が始まります。
担任の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど、様々な立場からのアドバイスが得られます。
欠席15日:学校内外の相談や指導
学校内外の相談機関や施設の利用が提案されます。
家庭訪問の際にパンフレットなどが渡されることが多いですが、学校としては、お子さんが安心して過ごせる居場所を確保することを大切にしています。
欠席20〜29日:「本人参加型不登校改善会議」の検討
最近では、お子さん本人、保護者、学校関係者、支援者が集まって話し合う機会が増えてきています。
この会議では、改善率が8割以上と高い成果が出ており、子どもに関わる大人が意識を合わせることが、お子さんにとって大きな影響を与えることがわかります。
学校によって対応は多少異なりますが、このような流れを知っておくと、心の準備ができますよね。
不登校の4つのタイプ
不登校には、大きく分けて4つのタイプがあると言われています。
タイプによって対応の仕方も変わってくるので、お子さんに合った対応を見つける参考にしてください。
「燃え尽き型」
このタイプのお子さんは、不登校の理由がはっきりしていることが多いです。
例えば、友達とのトラブル、部活での挫折、受験の燃え尽きなど。
もともとエネルギーが高く活発なお子さんなので、周りの温かいサポートがあれば、エネルギーが回復して自然と学校に戻れるケースが多いでしょう。
焦らず、エネルギーが満タンになるまで「待つ」ことが大切です。
「対人恐怖型」
もともと人との関わりが苦手で、人が怖いと感じるタイプです。
昔ながらの不登校のイメージに近く、休みが長期化する傾向があります。
登校を無理強いせず、「ゆっくり待つ」ことが肝心です。
丁寧なカウンセリングを通して、お子さんの気持ちを少しずつ整理し、学校に行きたいと思えるようになるまで待つことが大切です。
「エネルギー低下型」
最近、最も増えているタイプです。
エネルギーが低く、学校に行く気力が湧かない状態です。
他のタイプのお子さんが「学校に行きたいけど行けない」と葛藤するのに対し、このタイプのお子さんは「学校に行かなきゃいけない」という気持ちがあるのかどうか、自分でもよくわからないことが多いようです。
ただ待つだけでは状況が変わらないこともあるので、こちらから「登校を促す働きかけ」が必要になる場合があります。
「混合型」
「エネルギー低下型」と「対人恐怖型」の両方の特徴を持つタイプです。
人との関わりが苦手で、エネルギーも低いので、言われるまで行動しなかったり、自分から助けを求めることが少ない傾向があります。
このタイプのお子さんには、無理強いは逆効果です。
カウンセリングを通して、お子さん自身が自分の苦手なことなどを理解し、少しずつ登校できるよう促していくことが大切です。
不登校の予防と対応
ここでは、不登校を未然に防ぐための予防策と、もし不登校になってしまった場合の対応についてお伝えします。
不登校の予防
お子さんが不登校のサインを出していないか、日頃から注意深く観察することが大切です。
チェックリストをご用意しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
- 兄弟姉妹が不登校気味になっていないか
- 親御さん自身が精神的に不安定になっていないか
- 発達障害などの特性を抱えていないか
- 学力が急に下がり、授業についていけなくなっていないか
- 過去に不登校気味だったり、学校に馴染めなかった経験はないか
- 過去に登校しぶりや、お母さんと離れることに不安を感じていたことはないか
- 家庭環境が急に変化していないか(離婚、経済状況の変化など)
- 友達からのいじめや仲間はずれはないか
- 長期休み明けに、急に様子が変わっていないか
- 学校で一人でいることが多くなっていないか
学校や家庭での環境の変化がきっかけで、不登校になるお子さんも少なくありません。
担任の先生ともこまめに連絡を取り合い、学校での様子を把握するようにしましょう。
不登校の初期対応
不登校への対応は、とにかく初期の段階が肝心です。
長期化すればするほど、学校に戻ることが難しくなってしまう傾向があります。
落ち着いて、できるだけ早く行動できるよう、心の準備をしておきましょう。
初期対応の鉄則
不登校を防ぐための初期対応の鉄則として、「欠席は3日以内」と言われています。
学校を連続で休ませるのは3日までと決めておくことが大切です。
これが、「学校に行きづらいな」と感じているお子さんを、「本格的な不登校」にしないためのポイントです。
子どもが休みたいと言った場合
「お腹が痛い」「頭が痛い」など、体調不良を訴える場合は、無理せず休ませてあげて大丈夫です。
でも、頭痛や腹痛で休むのは、長くても2日程度ですよね。
3日以上続く場合は、不登校につながってしまう可能性があります。
子どもは言葉にできない
お子さんは、「学校に行きたくない」という気持ちを、なかなか言葉で表現できません。
そんな時、心の中のモヤモヤが身体の症状として現れることがあります。
でも、本格的な不登校にしないためにも、3日目には登校を促してあげましょう。
1週間休むと、大人も子どももツラくなる
大人でも1週間も家でゴロゴロしていたら、次の日会社に行くのが億劫になりますよね。
大人の場合は仕事に行かないと生活できませんが、子どもは休んでも特に困ることはありません。
そして、1週間、1か月、1年と、あっという間に不登校が長期化してしまうのです。
欠席3日目の家庭訪問で不登校が4割減
最近では、様々な取り組みの結果、3日目までに家庭訪問をすることで、不登校になる可能性が4割も減ったというデータがあります。
これは、欠席の理由に関わらず、先生が子どもと顔を合わせるだけで効果があるということ。
もし、お子さんが休みがちになったら、早めに家庭訪問をお願いしてみましょう。
不登校の具体的な理由がわかる場合
お子さんが不登校になった理由がはっきりしている場合は、その問題解決に向けて動き出すことが大切です。
まずは、学校との連携を密にしていきましょう。
不登校の解決には、学校との協力が欠かせません。
いじめ、友人関係の悪化、学業不振など、どんな理由であっても、担任の先生やスクールカウンセラー、不登校担当の先生たちと協力して対応していくことが大切です。
不登校の具体的な理由がわからない場合
お子さんがなぜ学校に行きたくないのか、理由がわからない場合は、先ほどお伝えした初期対応を心がけましょう。
そして、学校と連携しながら、具体的な理由がないか探っていくことが大切です。
理由がわからない場合でも、学校内のスクールカウンセラーに相談したり、学校外の医療機関や行政が運営する不登校の子どもが通える施設などを利用することも考えてみましょう。
最初は手続きなどが大変に感じるかもしれませんが、何もしないままでは状況はなかなか改善しません。
お子さんをサポートしながら、お子さんがいつでも動き出せるように準備を整えておきましょう。
不登校になってしまっても、大丈夫。
今回は、不登校を未然に防ぐための予防策や初期対応についてお伝えしましたが、もしお子さんが不登校になってしまっても、そこからできることはたくさんあります。
最近は、オンラインのフリースクールや適応指導教室、学校内に不登校のお子さんが通える場所など、さまざまな選択肢があります。
お子さんに合った環境を見つけることができれば、きっとお子さんは楽しく成長できます。
諦めずに、お子さんを支えてあげましょう。
今回のブログ記事が、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
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