【発達障害】学習障害とは?症状・種類・原因・診断・支援・相談窓口まで徹底解説

発達障害という言葉が広く知られるようになりましたが、同時に学習障害(LD)という言葉も耳にする機会が増えました。
しかし、その結果として、安易に学習障害である、あるいはその疑いがあると言われる子どもが増えたように感じます。
その影響で、障がいがあるという思い込みから適切な学習指導がされていなかったり、保護者の方が「うちの子は障がいがあるから勉強はダメなんだ」と落ち込んでいる姿が見られます。
この記事では、学習障害とはどんな障がいなのか、どんな種類、原因、支援、相談窓口があるのかなどを、元支援学校教員の視点から解説します。
お子さんが学習障害かもしれないと心配されている保護者の方は、この記事を参考に、お子さんの今後について考えてみてください。
学習障害(LD)とは?

意外と知られていないことが多いですが、学習障害とは発達障害の中の1つの種類のことをさします。
発達障害には、大きく分けて3種類があり、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)があり、それぞれで特性などが大きく異なります。
発達障害には「重複」することもあれば、特性に「強弱」もあることを理解しておくことが重要です。
今回は学習障害(LD)に絞って話を進めていきたいと思います。
自閉スペクトラム症(ASD)について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。

注意欠如・多動性障害(ADHD)について詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。

学習障害の定義
学習障害(LD)は、特定の学習能力の発達に困難が見られる状態を指します。
知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった能力のうち、一つ以上の能力の習得や使用に困難を示す状態です。
学習障害(LD)の種類
学習障害(LD)には、大きく分けて3種類あります。
- 読字障害(ディスレクシア)
- 書字障害(ディスグラフィア)
- 算数障害(ディスカリキュリア)
各種類によって、特徴が大きく異なります。
下記にこの3つを詳しく紹介していきます。
読字障害(ディスレクシア)
- 文字を読むのが苦手で文章を読むのが極端に遅い
- 学習障害の80〜90%はこの障害と言われている
会話や計算には特に問題ない場合が多いですが、文章を読むことだけが苦手なケースがあります。
文章を読めないことで、他の学習にも影響が出てしまうことがあります。
書字障害(ディスグラフィア)
- ひらがながうまく書けない
- 漢字を覚えるのが苦手
文字を形として認識することが難しいので、なかなか覚えられない。
漢字だけでなく英単語の綴りも苦手な人が多いです。
算数障害(ディスカリキュア)
- 知的発達に遅れはないが、計算や文章問題が極端に苦手
- 4〜6割は読字障害を合併している
数量の処理に困難があり、計算や単位、時間の把握が苦手です。
学習障害(LD)の原因
学習障害の原因はまだ解明されていない部分が多いですが、脳の機能的な違いや遺伝的な要因、環境的な要因などが複合的に関わっていると考えられています。
発達障害全般に言えることですが、保護者の育て方によって発達障害になったというわけではありません。
遺伝などの先天的な要因が大きいとされています。
子どもが発達障害だからといって、保護者のせいと考えている人がたまにいますが、それは間違いです。
学習障害(LD)の診断方法
発達障害の診断は、医師または医療機関のみが行うことができます。
発達検査の結果だけでなく、日常生活での困り感など様々な要因を総合的に判断して診断されます。
インターネット上にある発達障害診断テストは医学的な意味はなく、診断の代わりにはなりません。
幼稚園や保育園、小中学校の先生が「この子は学習障害だ!」と言うことがありますが、診断は医師または医療機関のみです。
先生の言葉に囚われすぎないように注意しましょう。
診断は、小児科、児童精神科、小児神経科、発達外来、大学病院、総合病院などの医療機関で受けることができます。
学習障害(LD)に関する誤解
学習障害(LD)という言葉が広まったことで、お子さんがひらがなやカタカナを上手に書けない、算数の足し算が理解できない場合に、学習障害(LD)ではないかと心配になるかもしれません。
また、教育関係者が学習障害(LD)の疑いがあると言うこともあるかもしれません。
しかし、診断は医師または医療機関にしかできません。
勉強が苦手で、ひらがなやカタカナを書く前の段階や足し算の前段階でつまずいている場合はよくあります。
学年相応の勉強ができないからといって、すぐに学習障害だと考えるのは、お子さんを誤った方向に導く可能性がありますので、注意が必要です。
元特別支援学校教員が教える学習障害(LD)の子の学習サポート

学習障害(LD)のあるお子さんは、見た目だけでは障害があると判断しにくい場合があります。
周りの人からは、勉強が苦手な子と思われてしまうこともあります。
また、学習障害(LD)と診断されても、他の子どもたちと見た目に変わりはないため、周りに理解されにくいことがあり、学習のサポートが不足しがちです。
しかし、学習障害のあるお子さんこそ、周りの丁寧なサポートが大切になってきます。
ここでは、元特別支援学校教員として、どのようなサポートが適切なのかを紹介していきます。
その子に合った指導
障がいのある子どもへの指導方法は、障がいの種類によって異なります。
しかし、最も大切なのは、障害の有無に関わらず、子ども一人ひとりの状況に合わせた指導を行うことです。
特別支援学校では、一人ひとりに応じた指導を行うことが基本とされていますが、地域の学校ではこの考え方がなかなか理解されにくく、実践が難しい状況です。
子どもの障害名や学年にとらわれず、その子にとって今必要な能力を見極め、その能力を最大限に伸ばすことが重要です。
そのためには、障害の特徴を理解するとともに、様々な指導方法を学ぶ必要があります。
子どもの能力を把握する
発達障害のある子どもを指導する上で最も大切なことは、その子の理解力や学習能力を注意深く観察することです。
例えば、計算問題が得意でも文章問題になると途端に解けなくなったり、応用問題になると計算量が増えて処理しきれなくなることがあります。
そのため、細かい部分まで気を配って観察する必要があります。
計算問題であれば、どこまで理解できているのか、文字を書くのが苦手な場合はどの程度苦手なのかを注意深く観察することが重要です。
計算問題の場合、足し算が苦手であれば、2桁の計算ができるのか、1桁の計算しかできないのか、足し算をする際に指を使っているのか、足し算の計算方法は合っているのか、などを確認します。
文字を書くのが苦手な場合は、ひらがな、カタカナ、漢字のどれが苦手なのか、直線を書くのが苦手なのか、曲線を書くのが苦手なのか、など細かく観察することが大切です。
子どもの能力を把握できれば、あとはその子に合わせた指導を行うことで、着実に成長を促すことができます。
スモールステップの指導
個別の指導において最も効果的な指導の一つが、スモールステップの指導です。
スモールステップ指導とは、その名の通り、課題を細かく分割し、一歩ずつ段階的に学習を進める方法です。
例えば、足し算が苦手な小学校低学年の子どもがいるとします。
その場合、まず足し算のどの部分でつまずいているのかを確認します。
数の概念や物の数え方が苦手だと感じたら、足し算の学習の前に、数の概念や物の数え方を学習し、足し算の土台をしっかりと固めてから取り組むのが良いでしょう。
文字を書くのが苦手な子も同様です。
ただ文字を何度も書かせるのではなく、どこが苦手なのかを理解し、苦手を克服するための練習や学習を考えます。
いきなりひらがなの「あ」をうまく書けるように指導するのではなく、まずは一画目だけを上手に書けるようにする、それができたら二画目というように、課題を細かく分割することが大切です。
無理な学習はしない
子どもによっては、どんなに勉強しても身につかないことがあります。
周りの子と比べて全然できていないからといって、せめて簡単な問題だけでもと無理をさせ続けると、二次障害でうつ病や不安障害などを発症してしまう可能性があります。
計算問題が苦手な子どもには、電卓を使用するなど、できる範囲で学習を進めるのが良いでしょう。
算数や数学の学習には、論理的思考などの考え方を身につけるという側面もあります。
もちろん計算能力も大切ですが、そこにばかりこだわりすぎて、他の分野で成長できる可能性を潰してしまうのは本末転倒です。
最終的には、小学校、中学校、高校、大学、そして大人になっても生き抜くための学ぶ力をつけることが大切です。
しかし、小学校などの早い段階で無理に勉強をさせられてしまうと、中学、高校、大学、そして大人になって本格的に学ぶ必要が出てくる前に勉強が嫌いになり、学ぶ意欲が低下してしまいます。
これでは、生き抜くための学ぶ力が育ちません。
何度も繰り返しますが、結局はその子に合った学習が大切ということです。
合理的配慮と個別の支援で一歩踏み出せたAさん

ここからは、私が教員時代に出会った学習障害(LD)のある生徒さんのエピソードを紹介します。
周囲の理解とサポートがいかに大切なのかを知っていただければと思います。
授業中はシャープペンを持たないAさん
僕が担任をしていた生徒の中に、Aさんという方がいました。
Aさんは学習障害があり、書字障害(ディスグラフィア)と診断されていました。
今まで漢字が覚えられないという生徒はたくさん見てきましたが、書字障害(ディスグラフィア)と診断されている生徒に会ったのは初めてでした。
どのくらい書けて、どのくらい書けないのかというところに、私は最初興味を持ちました。
自分の授業以外の様子も知りたかったので、社会の授業にお邪魔してAさんの様子を見ることにしました。
先生が質問することに対して、Aさんはかなりの知識を持っており、クラスの誰よりも早く手を挙げて答えていました。
知識量は豊富で、社会以外の英語や理科の授業でも先生の質問に対して、ハキハキと答えていました。
しかし、授業内容の確認としてプリントが配られると、一変して、先ほどまでハキハキとしていた様子から一気に静かになりました。
近くに寄ってみると、筆箱から鉛筆や消しゴムなど何も出さずに、じーっとプリントを見つめるだけでした。
書く場所がわからないのかと思い、「さっき回答してくれた答えをここに書くんだよ」と促しましたが、全く反応がありませんでした。
「筆箱からシャープペンを出して書いたら?」と促すと、ようやく筆箱からシャープペンを取り出して書いてくれました。
しかし、最初は何も書いているのか、全くわかりませんでした。
先ほどの回答があったので、かろうじて「牛」という漢字を書いたのかな?というのはわかりましたが、何も知らない人が見たら、何と書いてあるのかわからない文字でした。
結局その授業では、それ以降シャープペンを持つことはなく、プリントも牛以外の欄は空白のままでした。
後日、保護者から話を聞いてみると、Aさんは小学生の頃から字がうまく書けず、何度も注意を受け、練習を重ねても思うように上達せず、次第に書くことに抵抗を感じるようになったそうです。
その経験から「書いても無駄」という思いから、授業中にシャーペンすら持たなくなったAさん。
勉強への意欲が低下し、中学校では不登校になりました。
Aさんは字をうまく書けないというだけで、社会や理科、英語などは平均並みの能力がありました。
特に数学に関しては、計算能力も高く、成績は平均以上でした。
数字に関しては書くことができるので、計算問題などもスムーズに解くことができました。
もちろん、きれいな字というわけではありませんでしたが、読めないほどではありませんでした。
Aさんは、字がうまく書けないというだけで、それ以外は可能性に満ち溢れていました。
そんなAさんの状況を理解した学校側は、タブレットをノート代わりにするという合理的配慮を行いました。
その他にも、英語や社会、理科の授業ではプリントを記入式ではなく選択式の問題を多くするなどの配慮も行いました。
この配慮が転機となり、Aさんは数学以外の授業でも少しずつシャーペンを持つことが多くなり、英語や理科の授業でも鉛筆を持つようになりました。
文字を書くことへの抵抗は依然としてありましたが、配布されたプリントの選択問題だけ解くなど、少しずつ前向きな変化が見られました。
この事例から、私は学習障害(LD)のある子どもに対して、適切な配慮や学習方法を工夫することで、学習意欲を高め、成長を促すことができると思っています。
学習障害(LD)のある子の周囲のサポート

学習障害(LD)の子どもは、周囲から見ると一般的な子どもに見えてしまい、サポートがなかなか受けられなかったり、周囲の理解がないとなかなかサポートが受けられなかったりすることが多いです。
しかし、子どもは学校や家庭など日常生活で常に困っており、サポートがなければ疲弊して、不登校になったり二次障害でうつ病になったりしてしまいます。
そんなことにならないように、周囲のサポートは必要不可欠になります。
学習障害(LD)のある子どもの学校でのサポート
学習障害(LD)のあるお子さんの場合、学校に相談することで適切なサポートを受けられる可能性があります。
学校では、LDと診断されれば、通常は合理的配慮という形で様々な支援を受けることができます。
ただし、どのような配慮を受けられるかは学校によって異なり、対応に慣れていない学校では、難しい対応を求められる可能性もあります。
しかし、親御さんからお子さんの特性を丁寧に説明し、学校側が無理のない範囲での配慮を提案することで、学校側も協力してくれる可能性は十分にあります。
まずは、お子さんの特性や苦手なことを学校に伝え、具体的にどのような配慮を希望するかを伝えることが大切です。
学校現場での合理的配慮例
教員時代に実際に見てきた合理的配慮の例をいくつかご紹介します。
筆記面でのサポート
- 字が上手に書けない子には、タブレットでのノート作成を許可しました。
- 書くのが苦手でスピードが遅い生徒には、
- タブレットで黒板の写真を撮って後でノートに写すことを許可しました。
- 授業後、先生から板書のコピーをもらうようにしました。
- 書くのが遅い生徒には、テスト時間を10分延長する配慮を行いました。
学習内容の調整
- 宿題がその子のレベルに合っていない場合は、現在の授業より前の段階のプリントを用意し、それを宿題としました。
教科の特性に合わせた配慮
- 宿題がその子のレベルに合っていない場合は、現在の授業より前の段階のプリントを用意し、それを宿題としました。
- 5教科以外では、美術の授業で集団での作業が苦手な生徒には、別室で材料を用意し、そこで作品を作成・提出すれば成績に反映するという配慮を行いました。
多様な配慮の形
上記の例はすべてが学習障害(LD)のある生徒の例ではありませんが、発達障害のある生徒や不登校で学校でなかなか授業が受けられない生徒に対して行われた合理的配慮です。
学校によっては、対応が難しいものもあるかもしれませんが、合理的配慮の選択肢として参考にしていただければと思います。
合理的配慮に関しては、以前に記事にしているので、そちらも参考にしてみてください。

学習障害(LD)のある子どもの外部のサポート
学習障害(LD)に関する相談窓口としては、小児科、児童精神科、小児神経科、発達外来、大学病院、総合病院などの医療機関が挙げられます。
お近くの医療機関がわからない場合は、お住まいの市区町村役場の子育てに関する課に電話、または来庁して相談すると、近隣の医療機関を紹介してもらえます。
医療機関選びに迷う場合は、いくつか受診してみて、お子さんや保護者の方と相性の合うところを選ぶと良いでしょう。
大阪府には、【大阪医科薬科大学LDセンター】のように、学習障害(LD)を専門に診ている医療機関もあります。
意外と近くにあるかもしれませんので、ぜひ一度調べてみてください。
情報収集としては、まずはお住まいの市区町村役場で相談することをおすすめします。
役場では、民間の支援機関の情報はもちろん、自治体独自のサポート体制について教えてもらうことができます。
学習障害(LD)のあるお子さんを育てる上で、情報収集は非常に大切です。
役場だけでなく、学校や医療機関、民間の支援団体など、様々な方面から情報を集め、お子さんに合ったサポートを見つけてあげてください。
学習障害(LD)のある子の家庭でのサポート
学習障害(LD)のあるお子さんへの家庭でのサポートは、特別なことをする必要はありません。
お子さんの特性を理解し、その子に合った勉強方法や環境を整えてあげることが、保護者としてできる大切なサポートです。
相談窓口の利用や学校との連携(合理的配慮の依頼など)は、保護者が積極的に行ってあげるべきことです。
それ以外の普段の生活では、お子さんとご家族が楽しく過ごせる時間を大切にすることが重要です。
過度な期待やプレッシャーを与えないこと、できたことを褒めること、苦手なことを無理強いしないこと、休息時間を確保すること、家族みんなで楽しい時間を過ごすことなどがポイントです。
学習障害(LD)のあるお子さんの成長には、ご家族の温かいサポートが何よりも大切です。
一人ひとりに寄り添う子育て

今回は、学習障害(LD)のお子さんの特徴や支援方法について解説しました。
冒頭でも述べたように、学習障害(LD)を含む発達障害は、周りから理解されにくい目に見えない障害です。
特に学習障害(LD)は診断が難しく、勉強ができないだけなのか、それとも障害なのかが分かりにくいという側面があります。
しかし、障害の有無に関わらず、お子さんが困っているならば、その困りに対してサポートしていくことが大切だと考えています。
「これさえやっておけば大丈夫!」とか「学習障害(LD)の子にはこれが効果的!」といった情報に、保護者の方は藁にもすがる思いで救いを求めるかもしれません。
しかし、教育は個別性が高く、万人に共通する特効薬のようなものはありません。
ましてや、学習障害(LD)や発達障害など、一人ひとり特性が異なるものに対して、教育者の立場から安易なことは言えません。
そのため、一般的な情報や私の経験、実際に指導した生徒さんの事例などを紹介させていただきました。
今回の記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
もし、気になることや質問があれば、公式LINEやホームページのお問い合わせフォームから、いつでも気軽に連絡してください。
それから、枚方市内で完全個別指導の学習塾も運営しています。
もし、お子さんが勉強で困っていることがあれば、ぜひ一度ホームページをご覧ください。