発達障害と不登校、親が知っておくべきこと
お子さんが学校に行きたがらないことをきっかけに、発達障害が見つかる場合も珍しくありません。
お子さんが学校に行きたがらない理由が、もしかしたら発達障害による特性と関係しているかもしれません。
もしお子さんが発達障害を抱えているとすれば、その特性を理解し、お子さんに合った環境やサポートを提供することが重要です。
発達障害の特性を理解することで、お子さんの苦手を軽減したり、得意なことを伸ばしたりすることができます。
お子さんに合った環境やサポートを見つけることで、お子さんが安心して学校生活を送れるように、そして、自信を持って成長できるように手助けすることができます。
発達障害とは?
発達障害は大きくこの3つの種類に分類されることが多いです。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症の主な特性はこの3つ
臨機応変な対人関係が苦手
- 集団に合わせて行動するのが苦手
- 暗黙のルールや相手の気持ちがわからない
- 場の空気をよむのが難しい
こだわりが強い
- ものの配置や作業の手順などが一緒でないと不安
- 特定のものごとに強い興味がある
特定の感覚が極端に敏感あるいは鈍感
- 大きい音、まぶしい光が苦手
- ケガをしても気づかない、真冬なのに寒がらない
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害の主な特性はこの2つ
不注意
- うっかりミスや忘れ物が多い
多動性・衝動性
- じっとしているのが苦手
- 思いつきですぐに行動してしまう
学習障害(LD)
知的発達に遅れはないが、「読み」「書き」「計算」のうちいずれかもしくは複数が苦手
読字障害(ディスレクシア)
- 文字を読むのが苦手で文章を読むのが極端に遅い
- 学習障害の80〜90%はこの障害と言われている
書字障害(ディスグラフィア)
- ひらがながうまく書けない
- 漢字を覚えるのが苦手
算数障害(ディスカリキュア)
- 知的発達に遅れはないが、計算や文章問題が極端に苦手
- 4〜6割は読字障害を合併している
より詳しく知りたいひとは、こちらの記事もご覧ください。
発達障害と不登校に関するデータ
ある調査によると、不登校の児童生徒のうち、
- 小学生の16.1%
- 中学生の7.9%
- 高校生の13.3%
が発達障害であるという報告をしています。
不登校における発達障害の割合(教育機関)
発達障害と不登校の関連と支援に関する現状と展望
不登校になる理由は様々ですが、発達障害の特性によって、勉強が追いつかなかったり、友達とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、いじめを受けてしまうケースがあり、こうした二次障害が不登校につながることが多いのです。
不登校のよくある悩み
不登校になる理由は一人ひとり異なり、様々なケースがあります。
私がこれまで担当した生徒たちも、不登校になる前は、部活動に熱心に取り組んでいた子、友達と休日を楽しく過ごしていた子など、様々なタイプがいました。
しかし、不登校をきっかけに部活を辞めてしまったり、友達と遊ばなくなったりするケースも少なくありませんでした。
不登校の生徒が抱える共通の悩み:勉強
不登校の理由は一人ひとり異なりますが、私がこれまでに接してきた多くの不登校の生徒たちが共通して抱えていた悩みのひとつが、「勉強」です。
学校を1ヶ月休むだけでも、授業内容はどんどん進んでいきます。
教科書の内容は積み重なっていくため、一度遅れをとってしまうと、その後の授業内容を理解することが難しくなります。
不登校期間が長引けば長引くほど、学習の遅れは大きくなり、「どこから勉強すればいいのか分からない」「授業についていけない」という焦りと不安が生徒たちを襲います。
こうした学習の遅れに対する不安は、生徒たちにとって学校に戻ることをさらに難しくする大きな要因となります。
授業についていけないことで、自信を失い、自己肯定感が低下してしまうかもしれません。
また、周りの友達との学力差を感じ、孤立感を深めてしまうこともあるでしょう。
さらに、学校に戻ったときに、遅れを取り戻さなければならないというプレッシャーを感じてしまうかもしれません。
不登校の生徒たちが学校に戻り、安心して学習に取り組めるようにするためには、学習の遅れに対する適切なサポートが不可欠です。
発達障害を持つ生徒が抱える困難
特発達障害のある生徒にとって、不登校による学習の遅れは、より深刻な問題となる可能性があります。
発達障害の特性が、学習の妨げとなり、学校生活への困難を増幅させてしまうからです。
集中力を持続することが難しい
授業中に集中力を維持することが難しく、先生の話を聞き逃したり、課題に取り組む途中で気が散ってしまったりすることがあります。そのため、授業内容を十分に理解できず、学習の遅れにつながりやすいのです。
忘れやすい
記憶力に課題があり、一度覚えたことも忘れてしまうことがあります。
宿題やテスト範囲を覚えられなかったり、計算の途中で手順を忘れてしまったりすることもあります。
理解のスピードがゆっくり
新しい情報を理解したり、複雑な問題を解いたりするのに時間がかかることがあります。
授業のペースについていけず、置いていかれたと感じてしまうこともあるでしょう。
板書を写すのが苦手
板書を写すことに時間がかかったり、誤字脱字が多かったり、重要なポイントを見逃してしまうことがあります。
必要な情報をノートにまとめることが難しく、復習の際に困ってしまうこともあります。
学校での長時間授業がもたらす負担
中学校では、毎日6時間もの授業が行われます。
これは、大人にとっても長時間に感じるものです。
ましてや、成長過程にある子どもたちにとっては、非常に大きな負担となります。
大人でも、興味のないことや理解できないことを長時間聞き続けるのは苦痛であり、集中力を維持することは困難です。
ましてや、子どもたちは大人よりも集中力が持続しにくく、長時間授業の中で集中力を保ち続けることは大きな挑戦となります。
授業中に集中力が途切れてしまうと、学習内容を理解することが難しくなり、学習意欲の低下にもつながります。
長時間同じ姿勢で座り続け、先生の話を聞き、板書を写すことは、身体的にも精神的にも大きな疲労をもたらします。特に、発達障害のある生徒の中には、感覚過敏のために教室の環境(騒音、照明、座席の硬さなど)にストレスを感じやすく、疲労が蓄積しやすい場合もあります。
不登校は当然の結果?
こうした状況が続けば、学校生活への苦手意識や不安感が増大し、不登校になってしまうのも当然のことと言えるでしょう。
ポイントは
- 不登校の理由は生徒によって様々であること
- 多くの不登校の生徒が勉強に悩みを抱えていること
- 発達障害を持つ生徒は、学習面でさらに困難を抱えている可能性があること
- 長時間授業が生徒に大きな負担をもたらすこと
- これらの要因が重なり、不登校につながる可能性があること
これらのポイントを踏まえ、不登校の生徒への理解を深め、適切なサポートを提供することが重要です。
発達障害と不登校の子どもへのサポート方法
発達障害で不登校のお子様を持つ保護者の方へ、2つのサポート方法をお伝えします。
勉強面のサポート
近年、発達障害は少しずつ認知されるようになり、多くの方がその言葉を知っています。
学校の先生や塾講師の中にも、発達障害の生徒に対応した経験を持つ方が増えています。
しかし、発達障害は同じ診断名であっても、個人の特性は大きく異なり、その強弱も様々です。
私の実体験では、自閉スペクトラム症の生徒を受け持ったことがある先生がいらっしゃいました。
しかし、よく話を聞いてみると、その生徒の特性はそこまで強くなく、学習への影響も大きくなかったようです。
このような経験から、「自閉スペクトラム症だから大丈夫!」と安易に答える人がいますが、大きな間違いです。
知識や経験のない人が教えると、お子様にとって更なるストレスとなり、学習への苦手意識を悪化させてしまう可能性があります。
お子様の特性を理解し、適切な指導ができる専門家から学習サポートを受けることが重要です。
発達障害への理解
保護者の方にとって、まず大切なのはお子様の発達障害の特性を知ることです。
今までは理解できなかったお子様の行動が、発達障害の特性を知ることで理解できるようになり、接し方やサポートの仕方が変わることで、ご自身も余裕を持てるようになったという保護者の方の声を多く聞きます。
もちろん、保護者の方が全てを理解する必要はありません。
専門的な知識やサポート方法は、その都度専門家に相談やアドバイスを受けることで、負担を軽減することができます。
大切なのは、お子様をできる限り理解し、寄り添うことです。
少しでも理解しようと努めることで、お子様にも気持ちが伝わり、安心感を与えることができます。
私がこれまで出会った多くの不登校生徒の中で、保護者が理解し、上手に寄り添っていたご家庭の生徒さんは、本当に安定していました。
「今は別室登校で少しずつ頑張り、高校では〇〇に行って〇〇の勉強を頑張りたい」と前向きに考える生徒さんも多かったです。
お子様の発達障害特性を理解し、適切なサポートを行うことで、不登校を乗り越え、自信を取り戻すことができるのです。
発達障害について理解を深めるための情報源
発達障害についてより深く理解したい場合は、専門家への相談や書籍を読むことをおすすめします。
おすすめの書籍
書籍は、手軽に手に入るだけでなく、情報量が多いというメリットがあります。
特に、発達障害の子どもを持つ親御さん向けに書かれた書籍は、精神科医の先生による客観的な視点と豊富な事例に基づいており、大変参考になります。
以下、おすすめの書籍をいくつかご紹介します。
- 本田秀夫『子どもの発達障害』:子どもの発達に不安や悩みを抱える親御さんにオススメの書籍。
- 岡田尊司『発達障害 「グレーゾーン」』:発達障害未満の生きづらさの傾向とその対策について解説。
- 宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』:人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当てた書籍。
上記以外にも、多くの優れた書籍が出版されています。ご自身の興味やニーズに合った書籍を選ぶことが大切です。
おすすめの漫画
漫画でわかりやすく解説している書籍もおすすめです。
- 本田秀夫(著)、マンガ フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』
- 宮口幸治(著)、作画 佐々木 昭后『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち』
これらの書籍は、専門的な知識がない方でも理解しやすい内容になっています。
まずは、興味のある書籍から手に取ってみることをおすすめします。
相談できる場所
発達障害について相談できる場所はいくつかあります。以下に代表的なものを紹介します。
医療機関
- 小児科、心療内科、精神科: 診断や治療、薬の処方など、専門的な医療的なサポートを受けられます。
- 発達外来: 発達障害の診断や治療に特化した専門外来です。医師だけでなく、臨床心理士や言語聴覚士などの専門家チームによるサポートを受けられます。
行政機関
- 市町村の相談窓口: 各市町村には、発達障害に関する相談窓口が設置されています。専門の相談員に相談したり、支援サービスの情報を得ることができます。
- 児童相談所: 子どもの発達や育児に関する相談全般に対応しています。必要に応じて、専門機関の紹介や支援につなげてもらえます。
- 保健センター: 地域の保健師に相談できます。乳幼児健診や育児相談なども行っています。
民間団体
- NPO法人など: 発達障害に関する情報提供や相談、交流会などを開催している団体があります。同じ悩みを持つ親同士で情報交換や交流ができます。
その他
- 学校: 学校のスクールカウンセラーや担任の先生に相談することもできます。学校での様子や学習面、友達関係などの相談ができます。
子どもを理解してあげることが大切
当たり前のことかもしれませんが、お子様を理解してあげることこそが、安心と自信を与え、伸び伸びと成長させていくための第一歩です。
発達障害のあるお子様は、周囲や大人からの理解が得られにくく、孤独や不安を感じている場合も多いものです。
まずは、お子様の特性や行動を少しずつ理解し、共感することが大切です。
障害の有無に関わらず、安心できる環境で過ごせることが、お子様の成長にとって何よりも重要です。
今回の投稿が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
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