発達障害の子の褒め方・叱り方|ASD・ADHDの接し方を元教員が解説

「うちの子、もしかして発達障害かもしれない」「どう褒めて、どう叱ればいいの?」――そんな迷いを抱えていませんか。
- 発達障害の子を、どう褒めて、どう叱ればいい?
- ASDとADHDで、接し方は変えたほうがいいの?
- 叱ってばかりで、自己肯定感を下げていないか心配…
この記事を読むと、次のことがわかります。
- 発達障害の子と関わるときの「接し方の基本」
- 自己肯定感を育てる褒め方のコツ
- 子どもに伝わる叱り方の3つのポイント
- ASD・ADHDそれぞれの特性に合わせた声かけ
私は元中学校教員・元特別支援学校教員として、多くの発達障害のある子どもたちと関わってきました。
なお、発達障害かどうかの診断は、専門機関が総合的に行うものです。
この記事では診断の話ではなく、日々の接し方・褒め方・叱り方のヒントに絞ってお伝えします。
発達障害の子への接し方の基本は「子どもを主役」にすること

子育ての情報は、親や先生など「大人の視点」からのものが多いと感じませんか。
発達障害のあるお子さんと関わるうえで大切なのは、その逆――「子どもを主役にする」ことです。
「親の都合」ではなく「子どもの都合」を優先できると、お子さんはのびのびと育ち、保護者の負担も軽くなっていきます。
「親の都合」はイライラのもと
子育てで保護者の心につきまといやすいのが、「イライラ」や「ストレス」です。
その原因のひとつが、「親の都合」を優先してしまうことにあるかもしれません。
私たちはつい、子どもに「こうあってほしい」と期待します。
けれども発達障害のあるお子さんは、その特性から、期待どおりにいかない場面も少なくありません。
そのギャップが、イライラを大きくしてしまうのです。
たとえば朝の支度など時間に追われる場面で、お子さんがなかなか動かないと、つい「早くしなさい」「なんでできないの」と声を荒げてしまいがちです。
でもそれは「親の都合」が優先された状態で、子どものペースや気持ちには寄り添えていません。
「子どもの都合」を優先する関わりでは、まずお子さんの特性や気持ちを受け止め、そのペースに合わせて柔軟に対応します。
すると保護者のイライラは和らぎ、お子さんも安心して過ごせるようになります。期待を少し手放すだけで、親子の間に穏やかな時間が流れ始めます。
まずは「診断名」より子ども自身を理解する
発達障害の子育てでまず大切なのは、診断名や特性のラベルにとらわれすぎず、目の前のお子さん自身を理解しようとする姿勢です。
「この子は何が得意で、何が苦手だろう」「どんなときに喜ぶだろう」と問いかけながら、行動や言葉を観察し、内面に寄り添っていきましょう。
専門家による診断は、特性を理解し、適切な支援につなげるうえで役立つ情報です。
ただ、診断名がすべてではありません。
診断がなくても発達に凸凹のある子はたくさんいますし、診断があっても特性は一人ひとり違います。
大切なのは、診断名ではなく、その子に合った接し方を見つけていくことです。
診断名やIQそのものより大切にしたいことは、IQや診断名より大切なことの記事でも詳しくお話ししています。

子どもを理解してくれる大人が、自己肯定感を育てる
発達障害のあるお子さんにとって、自分を理解してくれる大人の存在は、ありのままの自分を認めてもらえる、かけがえのない支えになります。
大人が特性を理解し、その子に合った接し方やサポートを用意することで、お子さんは自己肯定感を育み、安心して自分らしく過ごせます。
逆に、理解のない環境では自己肯定感が下がり、不登校や心身の不調といった二次的な問題(二次障害)につながるリスクが高まります。
発達障害は複雑で多様なので、親であってもすべてを理解するのは難しいかもしれません。
それでも大切なのは「理解しようとする姿勢」です。
子どもは言葉だけでなく、表情や態度からも多くを受け取ります。
完璧に理解できなくても、寄り添おうとする姿勢は必ず伝わります。
理解してくれる大人は、親だけではありません。学校の先生や友人、地域の人など、さまざまな人が支えになります。学校に対しては、特性に応じた配慮(合理的配慮)をお願いすることもできます。


発達障害のある子の褒め方

発達障害のあるお子さんを育てるうえでは、「平均」や「常識」にとらわれないことが大切です。
とはいえ個性的な行動が多いと、どこを褒めればいいか迷う場面も多いですよね。
ここでは、どんなときに褒めるとよいかを具体的に紹介します。
子どもの「好き」に目を向ける
発達障害のある子どもは、独特な興味や関心を示すことがあります。
たとえばミニカーを「走らせる」のではなく、ひたすら「並べる」ことに夢中になる、というように。
一見「普通」と違って見えても、それはお子さんの個性であり、大切な要素です。
そんなときは「たくさん並べられたね」と声をかけてあげましょう。
「すごいね」「よく頑張ったね」という一般的な言葉より、「たくさん並べられたね」という具体的な言葉のほうが、達成感を強く刺激し、自信につながります。
子どもの「好き」に注目することは、才能や可能性を見つけるチャンスでもあります。
強い興味や集中力は、将来の夢や目標につながることがあります。
保護者がそれを認め、応援することで、お子さんは得意分野を伸ばしていけます。
大人の基準で褒めない
大人はつい、自分が「やってほしいこと」を子どもが頑張ったときに褒めがちです。
でもそれは大人都合の褒め方。お子さんは嬉しい反面、プレッシャーに感じることもあります。
子どもが本当に喜ぶのは、好きなこと・興味のあること・得意なことで褒められたときです。
無理におだてる必要はない
褒め方のコツは、子どもの気持ちに寄り添い、共感することです。
常に褒める必要はありません。
目標に向かって頑張っているときや達成できたときに、さりげなく声をかけるだけで十分です。
お子さんの様子をよく観察し、共感できるタイミングで褒めましょう。
ASD・ADHDの特性に合わせた褒め方
自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)では、褒め方のポイントが少し変わります。
気持ちに共感する点は同じですが、褒めるタイミングなどが異なるので、参考にしてください。

自閉スペクトラム症(ASD)の褒め方
ASDのお子さんは、物事を計画的に進めたい気持ちが強い傾向があります。
そのため、何かをやり遂げて達成感を味わっているタイミングで褒めると、喜びを共有しやすいでしょう。
また、皮肉や比喩など遠回しな言い方が伝わりにくいことがあります。
「よく頑張ったね」「〇〇ができたね、すごい」など、わかりやすく具体的な言葉で褒めましょう。
注意欠如・多動症(ADHD)の褒め方
ADHDのお子さんは、集中力が途切れやすい傾向があります。
そのため、取り組んでいる途中で「〇〇できてるね」と声をかけると、やる気を保ちやすくなります。
集中が切れそうなときに、すかさず励ますのも効果的です。
忘れ物やケアレスミスが多く、計画どおりに進まないことも珍しくありません。
そんなときは「結果オーライ」の気持ちで、完璧でなくても「できたこと」を褒めてあげましょう。
なお、ADHDのお子さんの学習面でのつまずきと対策は、ADHDの子の学習サポートで詳しく解説しています。

大切なのは「下心」のない褒め言葉
褒めるときに大切なのは、「下心」がないことです。
子どもの「好き」や「興味」を、素直に認める言葉をかけましょう。
たとえば、虫が好きなお子さんが珍しい虫について説明してくれたとき。
「すごいね」ととりあえず褒めるより、「よく知ってるね」と知識を認める言葉のほうが、心に響きます。
「こうなってほしい」と願うのは自然なことですが、その気持ちだけで関わると、子どもは自信を失うことがあります。
下心を手放し、「好き」を尊重することが大切です。
発達障害のある子の叱り方

発達障害のあるお子さんを叱ることも、もちろん大切です。
ただ、褒め方と同じように、叱り方にもポイントがあります。
ここでは、叱るときに意識したい3つのポイントと、ASD・ADHDで気をつけたい点を紹介します。
①教えるために叱る
「こうしてほしい」と願って叱るときに効果的なのが、「教えるための叱り方」です。
注意し、適切な行動を具体的に教えれば、お子さんも行動を改めることがあります。
大切なのは、伝わっているかを確認すること。
教えたい内容がお子さんの発達段階に合っていれば、何度か繰り返すうちに理解できます。
もし伝わらない、または理解できても行動が変わらない場合は、その課題はまだ難しいのかもしれません。
そのときは叱るのをやめ、保護者がサポートしてあげましょう。
②憂さ晴らしのために叱らない
親も人間ですから、ついカッとなって感情的に叱ってしまうこともあります。
そんなときは「さっきは感情的に叱ってしまった」と認め、それ以上は叱らず、同じ叱り方を繰り返さないようにしましょう。
感情的に叱ってしまったら、早めに謝ることも忘れずに。
感情的に叱ると、次に本気で叱ったときに、お子さんが耳を貸してくれなくなることがあります。
叱るときは、お子さんのことを第一に考えましょう。
③その場をおさめるために叱る
誰かに迷惑をかけたときなど、その場を収めるために叱る場面もあります。感情的にならず、冷静に伝えましょう。この場合は「形だけの叱り方」になりがちですが、それで構いません。効果は期待せず、何かを教えたいときは別の機会にしましょう。
ASD・ADHDで気をつけたい叱り方
ASDのお子さんは、相手の気持ちを考えずに失礼なことを言ってしまう場合があります。
そんなときは、その場では叱ってトラブルを収め、落ち着いてから理由を説明してあげましょう。
ADHDのお子さんは、不注意による失敗が多く、叱られる経験が積み重なりやすい傾向があります。
叱責が続くと自己肯定感が下がりやすいので、「できなかったこと」より「できたこと」に目を向け、叱るときは短く具体的に伝えるのがコツです。
大切なのは「本気」で向き合うこと
叱るときに大切なのは、「本気」で向き合うことです。
お子さんに変わってほしいと願うなら、そのための方法を真剣に考える必要があります。
叱るのが上手な人は、よく考えてから叱るので、叱る回数は多くありません。
お子さんのために、どこまで本気で向き合えるかが大切です。
結局、褒め方・叱り方の「方法」は重要ではない

ここまで褒め方・叱り方のテクニックを紹介してきましたが、実は「方法」そのものは、それほど重要ではありません。
一番大切なのは、お子さんを理解し、「親の都合」ではなく「子どもの都合」を優先する関わり方の考え方です。
最初は難しくても、できることから少しずつ始めてみましょう。
お子さんは、大人の本心を見抜く力を持っています。
どうか「子どもが主役」になれるよう、日々心がけてみてください。
もし、つらいと感じたり、一人で抱えきれないと感じたときは、専門機関に相談するのも一つの方法です。
お子さんとの関わり方や発達のこと、勉強のことで気になることがあれば、いつでも気軽にご相談ください。
大阪府枚方市で、完全1対1の個別指導を行っています。
