通級・支援級・特別支援学校の違いと選び方を元特別支援学校教員が解説

お子さんが発達障害と診断されたとき、「この先、学校生活をどう支えればいいのか」と悩む保護者は少なくありません。
- 通級・支援級・特別支援学校は、何がどう違うの?
- うちの子には、どの場が合っている?
- それぞれ、どんな課題があるの?
この記事を読むと、次のことがわかります。
- 通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校それぞれの対象と指導内容
- 3つの違いがひと目でわかる比較
- 元教員から見た、それぞれの実態と課題
- お子さんに合った学びの場の選び方
私は元中学校教員・元特別支援学校教員として、特別支援教育の現場に携わってきました。
制度の建前だけでなく、現場で感じた実態や課題も交えて、できるだけわかりやすくお伝えします。
通級指導教室とは

「通級による指導」が制度化されたのは比較的最近です。
そのため、通級指導教室の設置数はまだ少なく、不足しているのが現状です。
「通級による指導」が制度化された経緯
旧文部省・調査研究協力者会議の『通級による指導に関する充実化方策について(審議のまとめ)』(1992年)を受けて学校教育法施行令が改正され、1993年に「通級による指導」が正式に制度化されました。
制度化された当初、対象となる児童生徒は難聴児や言語障害児に限られていました。
その後、発達障害者支援法の制定などを受けて、2006年には、言語障害・自閉症・情緒障害・弱視・難聴・学習障害・注意欠陥多動性障害に該当する児童生徒も対象となりました。
対象になる児童生徒
通級による指導の対象となるのは、次の障害がある児童生徒で、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部に特別な指導を必要とする程度の場合です。
- 言語障害者
- 自閉症者
- 情緒障害者
- 弱視者
- 難聴者
- 学習障害者
- 注意欠陥多動性障害者
- 肢体不自由者
- 病弱者・身体虚弱者
どの場で教育を行うべきかは、障害の状態、教育的ニーズ、学校や地域の状況、専門家の意見などを総合的に考え、本人・保護者の意向を最大限尊重して、市区町村教育委員会が判断します。
なお、日本語指導が必要な児童に適用されることもあります。
指導内容と指導時間
| 指導内容 | 標準年間指導時間 |
|---|---|
| 自立活動および教科指導の補充 | 年間35〜280単位時間(週1〜8単位時間)。ただしLD・ADHDは年間10〜280単位時間(月1〜週8単位時間程度) |
指導内容は、基本的には障害による学習上・生活上の困難を改善するため、特別支援学校学習指導要領の「自立活動」に相当する指導を行います。
また、LD・ADHDのお子さんへの指導は、学習内容の習熟度に応じた工夫で対応することが適切な場合も多くあります。
実施形態(自校通級・他校通級・巡回指導)
実施形態には、次の3つがあります。
- 自校通級:在籍する学校で指導を受ける
- 他校通級:ほかの学校に通って指導を受ける
- 巡回指導:通級担当の教師が、対象の児童生徒のいる学校を訪問・巡回して指導する
障害に応じた特別の指導を、教育課程に加えたり、その一部に替えたりすることができます。
通級指導教室の課題
通級指導教室の整備が追いついていない
支援を必要とする子どもは年々増えていますが、指導の場である通級指導教室の整備は十分とは言えず、設置数が追いついていないのが現状です。
保護者・児童生徒の負担
教室が不足しているため、他校に通って指導を受けざるを得ない子も多くいます。通常の授業に加えて通級指導を受けるため、移動の負担や時間的制約、精神的なストレスが、保護者・児童生徒の負担になっています。
知的障害のある子は対象外
現在の制度では、知的障害のある子どもは「通級による指導」の対象外です。
言語指導や教科の補習を希望しても、通級指導教室では支援を受けられません。
個々のニーズに合った支援が求められています。

特別支援学級とは

特別支援学級は、特別な支援を必要とする児童生徒が、少人数のクラスで教育を受ける場です。
多くは学校内に設置され、通常学級との交流や共同学習も積極的に行われています。
対象になる児童生徒
特別支援学級の対象となるのは、障害による学習上・生活上の困難を改善するための、次の児童生徒です。
- 知的障害者
- 肢体不自由者
- 病弱者・身体虚弱者
- 弱視者
- 難聴者
- 言語障害者
- 自閉症者
- 情緒障害者
学びの場は、障害の状態や教育的ニーズ、学校・地域の状況、専門家の意見などを総合的に考え、本人・保護者の意向を最大限尊重して市区町村教育委員会が判断します。
なお、障害のない児童生徒は、通常の学級で学ぶことになります。
指導内容と指導時間
| 指導内容 | 指導時間 |
|---|---|
| 子どもの実態に即した特別な教育課程(自立活動や教科学習) | 週の半分以上 |
特別支援学級では、子どもの実態に合わせて特別な教育課程を組むことができ、自立活動を多くするなど、その子に合った内容にできます。
検定教科書の使用が適当でないときは、学校設置者(市町村教育委員会)の定めにより、適切な教科用図書を使えることになっています。
なお、2022年の文部科学省の通知により、特別支援学級での学習は週の半分以上とされています。
実施形態
- 一学級は最大8人
- 無学年制の学級
- 通常学級との交流学習・共同学習
最大8人で一学級とされているため、少人数での指導ができます。
また、原学級との交流学習や共同学習も行えます。
特別支援学級の課題
担任に特別支援学校教員免許が必須ではない
特別支援学級の担任には、特別支援学校の教員免許状の所持が求められていません。
そのため、特別支援教育に関する十分な知識・技能を持ち合わせていない場合があります。
指導時間の制約
2022年の文部科学省の通知により、週の半分以上を特別支援学級で授業を受けることになりました。
そのため、以前のように「配慮が必要な教科のときだけ特別支援学級で学ぶ」という柔軟な対応がしにくくなりました。
特別なニーズのある子の居場所
以前は、不登校や学習不振など特別なニーズのある子が特別支援学級で学ぶ対応をしていた学校もありました。
しかし2022年の通知により、障害のない児童生徒は特別支援学級を利用できなくなりました。
そのため、特別なニーズのある子が学べる場所が、改めて必要になっています。
学校以外の選択肢としては、適応指導教室(教育支援センター)やフリースクール、学びの多様化学校(不登校特例校)などがあります。


特別支援学校とは

特別支援学校は、さまざまな障害種に対応する、多様な教育機関へと進化しています。
少子化で多くの学校が廃校になる中、特別支援学校は年々増加傾向にあり、これは社会の変化とニーズの高まりを反映しています。
対象となる児童生徒
特別支援学校の対象となるのは、障害による学習上・生活上の困難を改善するための、次の児童生徒です。
- 視覚障害者
- 聴覚障害者
- 知的障害者
- 肢体不自由者・病弱者(身体虚弱者を含む)
知的障害を伴わない自閉症や注意欠陥多動性障害は、対象外となっています。
指導内容と指導時間
| 指導内容 | 指導時間 |
|---|---|
| 各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動などに加え、困難の改善を目的とした「自立活動」で編成。知的障害のある児童生徒には、特性を考慮した独自の教科を設定 | 1単位時間 約45〜50分/週あたり 約25〜30コマ |
特別支援学校では、困難の改善を目的とした「自立活動」をメインとすることが多いですが、教科学習をまったくやらないわけではなく、お子さんの障害や理解度に合わせて教科学習も行っています。
実施形態
- 単一障害の児童生徒は一学級6人が標準
- 重複障害の児童生徒は一学級3人が標準
- 高等部は単一障害8人、重複障害3人が標準
児童生徒と教員の人数比で見ると、特別支援学校が最も手厚い対応です。
また、一般的に小学部・中学部・高等部が一緒になっています。
特別支援学校の課題
教室不足
通う児童生徒が年々増えていますが、学校数の増加が追いついておらず、1校あたりの児童生徒数が増加傾向にあります。教室不足や学習環境の整備不足が深刻化しています。
通学の負担
特別支援学校は、すべての市区町村にあるわけではありません。
障害種によっては、自宅から10km以上離れた学校に該当することも少なくありません。
多くの学校がスクールバスを導入していますが、バス停までの送り迎えが必要なことも多く、通学の負担が課題です。
教員の専門性
障害の重度・重複化、多様化に対応するため、さらなる専門性が求められています。
教師間の連携や専門家からの助言を活かし、よりよい教育にしていく必要があります。
通級・支援級・特別支援学校の違いと選び方

ここまでの内容を、違いと選び方の視点で整理します。
3つの違い(比較表)
| 通級指導教室 | 特別支援学級 | 特別支援学校 | |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 肢体不自由・病弱・弱視・難聴・言語障害・自閉症・情緒障害・学習障害・ADHD | 知的障害・肢体不自由・病弱・弱視・難聴・言語障害・自閉症・情緒障害 | 視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱 |
| 指導内容 | 自立活動がメイン | 自立活動+教科指導 | 自立活動+教科指導 |
| 教員配置 | 13人に1人 | 8人に1人 | 6人に1人 または 3人に1人 |
| 専門性(免許) | 教員免許 | 教員免許 | 特別支援学校免許 |
- 通級指導教室:通常の学級に通いながら、週に数回、個別やグループの指導を受けます。単なる遅れの補充ではなく、個々のニーズに合わせた指導が中心です。
- 特別支援学級:特別な教育課程を組めるため、自立活動を増やしたり、習熟度に応じて学習内容を変えたりできます。
- 特別支援学校:3つの中で最も手厚く、教員1人あたりの児童生徒数が最も少ないのが特徴です。担任に特別支援学校免許が必要で、専門性も高いと言えます。
それぞれの選び方
発達障害のあるお子さんにとって、適切な学習環境を整えることはとても重要です。
どの環境ならお子さんが伸び伸びと成長できるか、本人はもちろん、家族、学校の先生、専門家など、いろいろな人と相談しながら考えていきましょう。
選ぶときに大切なのは、保護者の希望を優先するのではなく、子どものニーズを第一に考えることです。
お子さんが安心して学習でき、必要なサポートを受けられる環境を選ぶことが、成長につながります。
学校にお願いできる配慮については合理的配慮の記事を、家庭でできる学習サポートについては発達障害の子の勉強方法の記事も、あわせてご覧ください。


まず「安心して学べる環境」を整えてあげましょう

今回は、発達障害のあるお子さん向けの3つの支援体制——通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校——についてまとめました。
特別支援教育の根幹にある考え方は、一人ひとりの子どもに合った教育とサポートを提供することです。
周りの大人が果たせる最も重要な役割は、子どもが無理なく伸び伸びと成長できる環境を整えてあげることだと、私は考えています。
教育方法や指導法も大切ですが、まずはお子さんが安心して学習できる環境を整えること。
それが、その後の成長を大きく左右します。
お子さんに合った学びの場や勉強のことで気になることがあれば、いつでも気軽にご相談ください。
大阪府枚方市で、完全1対1の個別指導を行っています。
