発達障害のグレーゾーンって?見過ごされやすい特性と支援の必要性
「うちの子、もしかして発達障害?」そう思ったことはありませんか?
でも、病院で検査を受けても「診断がつかない」「様子を見ましょう」と言われることも。
実は、発達障害の特性を持ちながらも、診断基準を満たしていない「グレーゾーン」の子どもたちが多く存在します。
グレーゾーンの子どもたちは、一見すると「ちょっと変わってる子」「育てにくい子」という印象を持たれるかもしれません。
しかし、その内面では、生きづらさや悩みを抱えていることも少なくありません。
この記事では、発達障害のグレーゾーンについて詳しく解説し、見過ごされやすい特性や、なぜ支援が必要なのかについてお伝えします。
グレーゾーンの子どもたちへの理解を深め、適切なサポートにつなげるための一助となれば幸いです。
発達障害とは?
発達障害は、いくつかの種類の障害をまとめて呼ぶ言葉です。
それぞれに特徴があり、重なり合う場合もあります。
ここでは、特に知られている3つの種類と、その特性についてご説明します。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症の主な特性はこの3つです。
臨機応変な対人関係が苦手
- 集団に合わせて行動するのが苦手
- 暗黙のルールや相手の気持ちがわからない
- 場の空気をよむのが難しい
こだわりが強い
- ものの配置や作業の手順などが一緒でないと不安
- 特定のものごとに強い興味がある
特定の感覚が極端に敏感あるいは鈍感
- 大きい音、まぶしい光が苦手
- ケガをしても気づかない、真冬なのに寒がらない
人の気持ちを理解することが苦手で、独特なこだわりなどから、コミュニケーションが難しい場合があります。
そのため、小さい頃から一人で遊ぶことが多いかもしれません。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害の主な特性はこの2つ
不注意
- うっかりミスや忘れ物が多い
- 集中を持続することが難しい
多動性・衝動性
- じっとしているのが苦手
- 思いつきですぐに行動してしまう
幼い頃はあまり目立たないこともありますが、小学校に入ると座って授業を受けることが増え、特性が目立ちやすくなります。
成長と共に落ち着いてくる場合も多いです。
学習障害(LD)
知的発達に遅れはないが、「読み」「書き」「計算」のうちいずれかもしくは複数が苦手
読字障害(ディスレクシア)
- 文字を読むのが苦手で文章を読むのが極端に遅い
- 学習障害の80〜90%はこの障害と言われている
書字障害(ディスグラフィア)
- ひらがながうまく書けない
- 漢字を覚えるのが苦手
算数障害(ディスカリキュア)
- 知的発達に遅れはないが、計算や文章問題が極端に苦手
- 4〜6割は読字障害を合併している
読み書きや計算が苦手で、知的な遅れを伴う場合もあります。
知的な遅れが原因で学習が難しいのか、学習障害の影響で知的な遅れが生じているのか、判断が難しいケースもあります。
発達障害についてより詳しく知りたい方は、以前に書いたこちらの記事を読んでみてください。
「グレーゾーン」って一体何?
最近、「グレーゾーン」って言葉をよく耳にするようになりました。
発達障害に関連する本にも書かれているのを見かけます。
でも、この言葉、実は誤解を生みやすいんです。
今回は、グレーゾーンという言葉の本当の意味についてお話しします。
グレーゾーンは正式な言葉じゃない
よく使われる「グレーゾーン」という言葉、実は医療用語ではないんです。
テレビや雑誌などで、分かりやすく説明するために使われている言葉なんです。
発達障害には診断基準があって、それに当てはまるかどうかで診断が決まります。
医療の世界では、診断基準に当てはまらなければ「発達障害」とは診断できないので、「疑い」と表現されることが多いんです。
グレーゾーン=軽度ではない
お子さんのことで心配になって病院を受診したけれど、診断されずに「疑い」だったから「グレーゾーン」だと考える方もいるかもしれません。
そして、「グレーゾーンだから、障害とまではいかないし、そこまで心配しなくても大丈夫」と思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
でも、グレーゾーンは決して軽度という意味ではないんです。
先ほどもお話ししたように、診断基準をすべて満たしていないと「発達障害」とは診断されません。
つまり、ある部分では「発達障害」と診断されてもおかしくない状態であっても、他の部分が基準に満たないために「グレーゾーン」になってしまうことがあるんです。
言い換えると、グレーゾーンのお子さんでも、発達障害のあるお子さんと同様に困っている部分があるかもしれない、ということなんです。
グレーゾーンの特徴と見過ごされやすい理由
グレーゾーンのお子さんの特徴や、なぜ見過ごされやすいのか、詳しく見ていきましょう。
お子さんのサインに気づき、適切なサポートにつなげることが大切です。
グレーゾーンの特徴
グレーゾーンのお子さんは、発達障害と診断されたお子さんと似たような特徴を持つことが多いです。
- 忘れ物が多かったり、集中力に欠ける
- 興味のあることを見つけると、周りが見えなくなる
- コミュニケーションが苦手で、友達作りに苦労する
このような特性は、発達障害の特性と重なります。
また、運動や体を動かすことが苦手な子もいます。
幼稚園のお遊戯会などで、周りの子に比べてダンスがうまく踊れないといった場面で、特性に気づくきっかけになることもあります。
見逃される理由
グレーゾーンのお子さんの特性は、なぜ周囲に見過ごされてしまうのでしょうか?
今回は、その中でも特に多い3つの理由をご紹介します。
周りの人が困るほどではない
グレーゾーンのお子さんは、診断基準を満たしていないため、発達障害の特性が一部だけ強く出ている場合があります。
そのため、周りの大人や子どもが困ることが少なく、お子さん本人が一人で悩んでいるケースが多いのです。
発達障害の検査を受けるきっかけは、多くの場合、周囲の大人がお子さんの様子を心配したり、困り感を感じて病院を受診することです。
そのため、周囲が困り感を感じなければ、特性が見過ごされてしまうことが多いのです。
診断されているお子さんよりも特性が強く、お子さん本人が困っている場合でも、周囲が気づかなければ、必要なサポートや支援が届かないことがあります。
周囲の理解不足
周囲の方々が発達障害に対する知識や理解不足だと、お子さんの特性に気づきにくいことがあります。
グレーゾーンのお子さんは、「少し変わった子」「なかなか上手にできないことが多い子」と見られてしまうことが多いです。
そのため、「頑張ればできるようになる」「努力が足りない」と考えられてしまうことがあります。
実際、努力すればある程度はできるようになることもあります。
しかし、それが「やはり努力不足だった」という誤解を生み、お子さんに無理をさせてしまうことにもなりかねません。
周囲の理解があれば、「もしかしたら発達障害かもしれない」「支援が必要なのかもしれない」と気づいてもらえる可能性が高まります。
学習面で困っていない
これも見過ごされる理由の一つです。
グレーゾーンのお子さんの中には、集団生活が苦手だったり、他の子どもと違う様子が見られても、勉強ができているために見逃されてしまうケースがあります。
学校では、多少他の子と違っても、勉強ができていると先生もあまり問題視しません。
「少し変わっているところもありますが、学習にはとても真面目で頑張っています」と言われてしまうこともあります。
保護者としては、この言葉を聞いて「少し変わっていると思っていたけれど、先生もこう言ってくれるなら大丈夫かな」と安心してしまうかもしれません。
しかし、発達障害のあるお子さんの中には、知的な遅れを伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。
勉強ができるからといって安心していると、お子さんの本当の困りごとや苦しみに気づいてあげられないことがあるのです。
グレーゾーンの子どもたちが抱える生きづらさ
発達障害のあるお子さんは、その特性から生きづらさを感じることがあります。
実は、診断されていないグレーゾーンのお子さんたちも、同じように、あるいはそれ以上に生きづらさを抱えていることがあるんです。
今回は、グレーゾーンのお子さんならではの生きづらさについてお話しします。
理解されにくい特性と、そこから生まれる生きづらさ
これは、グレーゾーンのお子さんだけでなく、発達障害と診断されたお子さんにも共通することです。
「発達障害」という言葉は広く知られるようになりましたが、その特性について本当に理解している人はまだ少ないのが現状です。
特にグレーゾーンのお子さんの場合、「診断されていない=軽い」と誤解されてしまうことがあります。
「努力が足りない」「頑張ればできる」と言われて、無理強いされてしまうケースも少なくありません。
このような「理解されない」状況が続くと、お子さんは少しずつ疲れてしまい、生きづらさを感じてしまうことがあります。
二次障害の可能性
理解されない状況が続くと、心身に大きな負担がかかり、二次障害につながることがあります。
二次障害は、大きく分けて3つの症状に分類されます。
精神的な症状
- 抑うつ: 気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、食欲不振、睡眠障害、集中力の低下、自責感、希死念慮など
- 不安障害: 過度な心配や緊張、パニック発作、恐怖症、強迫性障害、社交不安障害など
- 適応障害: 特定のストレス要因に対する過剰な反応、情緒不安定、抑うつ、不安、身体症状など
- PTSD(心的外傷後ストレス障害): トラウマ体験によるフラッシュバック、悪夢、回避行動、過覚醒など
身体的な症状
- 睡眠障害: 不眠、過眠、悪夢など
- 食欲不振: 食事が喉を通らない、体重減少など
- 頭痛・腹痛: ストレスからくる身体症状
- 慢性疲労: 常に体がだるい、疲れやすい
行動面の問題
- 不登校・ひきこもり: 学校や職場に行けなくなる、外出を避けるようになる
- 自傷行為: リストカット、過食嘔吐、OD(薬の過剰摂取)など
- 攻撃性・暴力: 怒りをコントロールできず、他者への攻撃的な言動や暴力に発展する
- 依存症: アルコール、薬物、ギャンブルなどへの依存
このように、心身に溜まった負担が、様々な症状となって現れることがあります。
診断されていないグレーゾーンのお子さんの場合、支援を受けにくい状況だと、このような症状が出やすくなってしまう可能性があります。
発達障害と二次障害については、以前の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
必要な支援を受けられない現実
発達障害と診断されると、障害者手帳を取得でき、様々な行政サービスや支援を受けることができます。
例えば、学校教育では、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校など、お子さんの特性や能力に合わせた学習支援が受けられます。
しかし、グレーゾーンのお子さんは「障害未満」と判断されるため、困っていてもこれらの支援を選べないことがあります。
「支援が必要なのに受けられない」という声は、これまでも多くのお子さんや保護者の方から聞いてきました。
特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室について詳しく知りたい方は、以前の記事をご参照ください。
グレーゾーンのお子さんへの支援
これまで何度も伝えてきましたが、「グレーゾーン」だからといって支援が必要ないわけではありません。
むしろ、グレーゾーンだからこそ、適切なサポートが重要になるケースもあるんです。
今回は、具体的な支援の方法についてお話しします。
早期発見と適切な支援の重要性
お子さんが小さい頃に、もしかしたら…と心配になって病院を受診した経験がある方もいるかもしれません。
その時に「発達障害」とは診断されず、「様子を見ましょう」と言われた方もいるのではないでしょうか。
しかし、そのままにしておくのはとても危険です。
「発達障害」と診断されなかったからといって、心配していた特性がなくなるわけではありません。
特性と上手につき合っていくためには、早期に適切な支援を受けることが大切です。
発達障害でもグレーゾーンでも、早くから支援を受けることで、その後の人生に良い影響を与え、生きづらさの軽減につながります。
具体的な支援の方法
特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室などは、基本的には「障害」のあるお子さんしか利用できません。
しかし、市区町村や教育委員会、学校によっては、診断がなくても対応してくれる場合があります。
「どうせ無理だろう」と諦めずに、まずは通っている学校や教育委員会に相談してみましょう。
また、受診した病院でアドバイスをもらったり、定期的に通院して経過観察をするのも良い方法です。
たくさんの子どもたちを見てきた医師の視点から、お子さんの様子や具体的な支援方法を教えてもらうことで、家庭や学校生活でのサポートに役立つはずです。
さらに、お住まいの市区町村によっては、発達支援センターなど、発達に関する相談や支援を提供しているサービスがあるかもしれません。
ぜひ、一度調べてみてください。
支援を受けるメリット
支援を受けることは、お子さんにとってたくさんのメリットがあります。
それは、お子さん自身が自分の特性と上手に向き合い、困難を乗り越える力を育むことにつながります。
発達障害への理解は周囲の大人にとってとても大切ですが、お子さん自身が自分の特性を理解し、対処法を学ぶことも同じくらい重要です。
- 友達との上手な関わり方
- 自分にあった勉強方法
- 自分の得意なこと、苦手なこと
これらを知ることで、周りの人の力を借りながら、できることを少しずつ増やしていくことができます。
支援がもたらすプラスの変化
- 自己理解を深め、自信をつける:自分のことを理解することで、自己肯定感が高まり、自信を持って成長していくことができます。
- 二次障害のリスクを減らす:支援を受けずにいると、できないことが目立ち、自己肯定感が下がり、二次障害につながる可能性があります。
支援は継続することが大切
適切な支援をできるだけ早く始めること、そして、途中で諦めずに続けることが重要です。
「少し良くなってきたから」と途中で支援をやめてしまうケースもありますが、少なくとも中学校を卒業するまでは続けることをおすすめします。
お子さんの周りの環境は変化しやすく、お子さん自身も成長していきます。
様々な状況に対応できるようになるためにも、できるだけ長く支援を続けることが大切です。
グレーゾーン:見過ごしてはいけないサイン、そして未来への架け橋
「発達障害」と診断されなかったからといって、安心できるわけではありません。
「グレーゾーン」は決して「軽度」を意味するものではなく、お子さんの困りごとが消えてなくなるわけでもないからです。
たとえ今は問題がないように見えても、適切なサポートはその後のお子さんにとって非常に重要です。
早期の支援によって、お子さんは自分の特性と上手につき合い、大人になった時に困ることを減らすことができます。
保護者の方や周りの大人は、お子さんの特性や発達障害について理解を深め、適切なサポートを提供することが大切です。
そうすることで、お子さんは自分らしく、楽しい人生を歩むことができるでしょう。
大変なこともあるかもしれませんが、周りの協力を得ながら、お子さんを温かく見守り、支えていきましょう。
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